宗像利浩さんへの期待
日本民藝協会会長 水尾 比呂志
宗像利浩さんは、昭和三十二年(1957)会津本郷宗像亮一さんの長男に生れ、京都嵯峨美術短大卒業のち、
島根県出西窯で修行。昭和五十五年(1980)初めて作を世に問ひました。当初からその作陶力は注目されて
ゐましたが、十数年の研鑚を積んで、平成九年(1997)に、現代日本最大の陶藝展(ビエンナーレ方式)である
日本陶藝展第十四回展で準大賞の日本陶藝展賞を得て、一躍新進陶藝家として知られるやうになりました。
受賞作は、自分の名前に因んで「利鉢(としばち)」と名づけた径六十糎ほどの大作でしたが、堂々たる形姿と
みごとな釉調は、審査員諸氏の大きな賞賛を博したのです。
世には粗物と軽んじられてゐても、河井寛次郎・柳宗悦・濱田庄司氏らに高く評価された宗像窯は、
昭和三十三年(1958)六代目豊意さんがブリュッセル萬博のグランプリを受賞し、昭和四十六年(1971)
には七代目亮一さんがこの日本陶藝展第一回展で優秀賞を得てゐる民藝の名窯です。利浩さんは昨平成十七年
十月に、この窯の八代目を継ぎました。逞しい傳統に育まれたその造形力の確かさと、新しい陶法の探求に
果敢に挑む活力の豊かさは、必ずや父祖の業績を超える仕事を築き上げて行けるでせう。
利浩さんは、同じ民陶の生れである中国の天目茶碗や朝鮮の井戸茶碗の持つ、用の美の素晴らしさに惹かれ、
それらを手本とする作陶にも励んでゐます。恵まれた仕事の場と生来の能力によって、現代陶藝の種々相に
惑はされることなく、作陶の本道を歩み続けて、みづからの陶境を熟成されんことを、心から期待しております。
(平成十八年六月)
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