■宗像窯八代 宗像利浩作陶展における乾先生による推薦文

宗像利浩さんの個展によせて

兵庫陶芸美術館館長 乾由明

 会津美里町(旧会津本郷)の宗像窯は百年余の長い歴史を持つ民陶の窯であるが、このたび当主の宗像利浩さんが、八代目を継承されて初めてといえる本格的な個展を開かれることになった。利浩さんの仕事については、一九九七年の第一四回日本陶芸展で準大賞を得た「利鉢」の、飾り気のない率直な作調に感銘を受けて以来、私は、ずっと大きな関心をもって見守ってきた。この後の利浩さんの制作はめざましく、日常の生活に根ざした剛健なやきものという宗像窯の伝統をあくまで踏まえながら、一層陶技を磨いて作域を拡げ、伸びやかさと鋭さとが渾然と一体になった独自な作品をうみ出している。また近年は皿や壷などの身近な器物のほかに、茶碗や水差しといった茶陶にも熱心に取り組み、大きな成果をあげているのである。
 今回の個展には、宗像窯の伝統ある大皿や壷などに、用の美の頂点ともいうべき井戸茶碗、天目茶碗の美しさを取り入れた作品を発表するという。民陶と茶陶の両方の世界に通暁しているこの練達の作家によって、どのようなあらたなやきものが創り出されるか、まことにたのしみである。